材料信頼性工学研究室 本文へジャンプ
主な研究テーマ
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本研究室で,博士課程・修士課程および学部4年生が取り組んでいる主な研究テーマの紹介です.

ケナフ繊維の引張強度に及ぼすねじりの影響
 D2新田悠二
環境問題が地球規模で問われる現在,GFRP等の代替材として,環境に負荷が低い天然繊維を強化材としたグリーンコンポジット(GC)が注目を浴びている. 一般に天然繊維は複雑な断面形状をしており,また,天然繊 維は繊維軸に沿ってねじれた構造になている.ねじれの程度は個々の繊維でそれそれ異なっており,ねじれの強い繊維 は引張試験中に別の機械的挙動につながることが考えられる. そのため,本研究では引張強度に及ぼす繊維構造の影響を調査した.

引張試験中に繊維がねじれた場合,引張強度が手活かすことがわかった.また,繊維の初期ねじれを推定するために自己相関を用いることを考えたが相関が低くく新たなねじれ角の算出法を現在検討している.

一方向ラミー/PP複合材料の連続成形プロセスの開発
D2キムヒョンボム, M2 木村修一郎
 ・昨年度の研究概要
天然繊維にラミー撚糸,母材にポリプロピレン(PP)を使用した,被膜プロセスと含浸プロセスを複合した廉価で新しいGC連続成形法を提案し,優れた機械的特性を有するGC材の開発を行った.
・問題点
GCの汎用性向上のために撚糸数を従来の6本から33本に増やしてテープ材を成形し,更にそれを用いた織物状のGC材作製を試みた.しかし,気泡が入る・撚糸の湾曲など様々な問題点がある.


疲労負荷下における繊維強化セラミックスのヒステリシス挙動シミュレーション
 D2喜多村 竜太
 CMCの繰返し疲労損傷過程においてその応力-ひずみ関係はヒステリシス挙動を示す. そこで本研究では,その挙動の原因を明らかにするため,SFCモデルを作製しFEM解析を行った.このとき,そのヒステリシス挙動には,界面はく離が影響していると考え, 繊維/マトリックス界面に4重節点を導入し,その接触条件を変化させることで界面剥離の表現を行った. その結果,ヒステリシス挙動に影響を与えるパラメータとして界面せん断強度および静摩擦係数が挙げられ,この両者が小さいほどヒステリシス挙動が大きくなることが確認できた. また,負荷/除荷時の静摩擦係数の違いにより残留ひずみが増加していく挙動を再現することができた.しかし,現在実際の疲労試験との挙動を再現するまでには至っていないのが現状である.

ラミー麻/PPグリーンコンポジットの等2軸同時繰返し引張負荷処理による特性改善効果
 M2坂田裕介
 環境に優しい複合材料であるグリーンコンポジット(GC)は、従来使用されてきたガラス繊維や炭素繊維と熱硬化性樹脂を複合化させたGFRPやCFRPと比較して強度や剛性が劣り、 幅広い普及には至っていない。そこで、昨年度はRamie/PP複合材料に,2軸交互繰返し引張負荷処理,等2軸繰返し引張負荷処理を施すことで機械的特性にどのような効果があるかを調査した.  2軸交互繰返し引張負荷処理では,プラスとマイナスのひずみで繰返されるため,繰返し回数を重ねてもCMFが繊維軸方向に傾かず,機械的特性への影響が少なかった.  等2軸同時繰返し引張負荷処理では,複合材中の繊維は,どの配向角度においても強化され,どの切り出し角度においても複合材の引張強度,ヤング率は向上する. イメージ

フィブリルラミー/PVAサンドイッチ構造体の機械的特性
M1 Yine Jin
 現在,地球規模での環境問題が問われている.環境に与える影響が大きいCFRPやGFRPの代替材として,環境に負荷を与えない天然繊維を用いた複合材料への注目が集まっています.  そこで,本研究では,高強度天然繊維であるラミーの織布の間にラミー繊維にフィブリル化を施したにフィブリル化ラミーを生分解性であるPVAで挟み込むことにより,フィブリルラミー/PVAサンドイッチ構造体とするグリーンコンポジットを作製し,その機械的特性について明らかにすることを目的としています.

竹繊維/PP複合材料の機械的特性におけるひずみ速度依存性の解明
 M2田村 友也
 竹繊維/PP複合材料の機械的特性におけるひずみ速度依存性は, 繊維形状や繊維含有率,繊維配向,繊維と樹脂の接着性に影響を受けると考えられる.  従来の研究より,高アスペクト比の繊維によってひずみ速度依存性が向上するため,昨年度は,高アスペクト比の繊維を使用しつつ,繊維配向を改善することでひずみ速度依存性の向上を試みた. しかし,引張強度などの機械的特性は向上したものの,ひずみ速度依存性は低下した. この原因としては,仮成型体同士の接着性が低いために仮成型体表面の繊維と樹脂の接着性が低かったことや試験片作製中に気泡の混入が生じたことが考えられた. また,ひずみ速度依存性が低下した要因に関して,論理的な考察の必要性があると考えらえた.

亜麻繊維スライバーを用いたグリーンコンポジットの力学特性
M2 古家 晃
 昨年度の研究概要
環境問題が地球規模で問われる現在、廃棄処理困難なガラス繊維強化プラスチックの代替材として高強度天然繊維を用いたGCが注目を浴びています。 しかし、天然繊維をGCの強化材とした際、繊維のうねりがGCの強度に及ぼす影響は解明されていません。 そこで本研究では,繊維うねりの不規則性とGC 内の破壊危険度分布の関係を局所的空間解析に基づいて明らかにすることを目的とする.

昨年度の問題点
実際の試験片は表と裏で配向が異なるのに対して解析では表裏別々で2次元解析を行っていたため正確な破壊危険度を予想したとは言い難い。

繊維配向を表裏合わせた試験片モデルで3次元FEM解析を行い、Tsai-Hill、局所的空間自己相関の解析結果と破断写真を照らし合わせ、破壊危険度の考察及び繊維うねりの影響について考える。 亜麻スライバー繊維にニードルパンチ処理を施し、強度改善を行う。


繊維未切断円孔を有する平織CFRPの接合部への利用とその強度
M2 本山 航也
 炭素繊維強化プラスチック(以下CFRP)に円孔を設ける際, 強化材である炭素繊維ごと切断し円孔を設ける手法(以下DH)が一般的である. しかしDHにより円孔を設けたCFRP材料は無孔CFRP材料に比べ引張強度が大幅に低下する.そこでこの強度低下の改善を目的に炭素繊維を切断せず円孔を設ける手法(以下CH)が提案されており, CHを用いることでDHに比べ引張強度が向上することがわかっている.昨年度はこのCHによる強度向上要因を明らかにするために有限要素法解析を行った. 解析に用いたモデルの一例を図に示す.また解析結果よりCHは炭素繊維を湾曲させることで円孔周辺のヤング率が変化し, 円孔縁におけるひずみが緩和されるとともに円孔縁における応力集中がDHに比べ緩和されることで強度が向上するということがわかった.

ラミー麻撚糸の撚糸構造におけるマイグレーションとそれが及ぼす引張強度への影響
M2 桜田 翔平
 近年,地球環境問題の解決策として,持続可能な材料である天然繊維強化複合材料(グリーンコンポジット)の研究・開発に期待が寄せられている. 本研究では,強化材として天然繊維であるラミー麻撚糸に着目し,撚糸構造の引張強度特性に及ぼす影響を調査した. ラミー麻単糸(#16,トスコ叶サ)19本を自作の手動撚り機で撚りをかけて撚糸を作製し,X線検査装置による断面観察および引張試験を行った. 撚糸中の単糸の位置が移動する現象(マイグレーション)の様子を調査した結果,マイグレーションはすべての単糸に均等には起きていないことがわかった.一方で,強度特性の向上に最適な撚糸形態を見つけることはできなかった.

物理的処理によるクレイナノコンポジットの分散性改善
M2 松田 祐樹
 近年,ナノコンポジットはマトリックスへ数wt%のナノフィラーを添加/複合することで引張強度などに大幅な向上が認められるため, 様々な構造部材への応用が期待されている.しかし,ナノレベルの分散が不足すると,その機械的特性が低下することも報告されている. 本研究ではナノフィラーにナノクレイを用いてナノクレイ/エポキシコンポジットを作製し,クレイ分散性が疲労的特性に与える影響についてEPMA元素分析を用いて調査した.

昨年度はクレイナノコンポジットの分散性と分散条件に関する調査を行った。分散時間と温度が引張強度に与える影響について温度による影響よりも分散時間が大きく影響を与える可能性がでてきた。 また一昨年のクレイナノコンポジットの疲労特性について調査より、Neat材よりも疲労特性が劣っていることが判明した。原因として、凝集や偏在といた粒子への応力集中が考えられることがわかった。


撚糸強化GCのVaRTM成形性とその曲げ特性
 M1今津弘太
 VaRTMとは,真空含侵工法のことであり,真空中で繊維に樹脂を含侵させるため,気泡が入らないという特徴がある. 大豆油由来樹脂とラミー麻撚糸を用いた一方向強化グリーンコンポジット(GC)をVaRTMにより成形し,撚糸の撚り数が成形性に及ぼす影響と作成したGCの引張り特性に与える影響を調査した. 現在母剤として使用している材料ではラミー麻撚糸織物を強化繊維とした場合に亀裂が生じるという問題点がある.
今年度は,ラミー麻撚糸(TPI=1.5,3.5,6.5)を用いた平織材を作成し,単層板及び積層板の曲げ特性を調査しする. また,ANSYSにより実験結果の妥当性を確認する.また,撚糸織物を強化材とした場合でも一方向撚糸と同様にVaRTM成形時間に影響を及ぼすか,成形性に違いが生じるかを確認する. さらに,朱子織や綾織単層板においても曲げ特性を確認する.


単撚糸複合材料の引張負荷下における界面強度評価
 M1 杉田 朋洋
 短冊型SYC(Single Yarn Composite)試験片を用いたラミー繊維の繊維多重破断挙動の調査を行った. 試験から得られた樹脂中における繊維の観察結果より,撚糸の破断と同時に樹脂クラックが生じ進展することで試験片破断に至ることが分かった. このことから,撚糸を用いる天然繊維強化複合材料においては,従来のCFRP等にみられる多重破断挙動による損傷累積型破壊ではなく, 強化繊維の破断が1箇所でも複合材料全体の破断に大きな影響を及ぼす最弱リンク仮説が成り立つ破壊様相であると考えられる. しかし樹脂・単撚糸間にはく離は見られず,これは天然由来の樹脂・繊維の組み合わせによる界面の相互親水性が原因だと考えられる.

   

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